行政書士がやさしく紐解く「家族信託」の基本
2026/09/02
家族信託とは?
〜大切な財産を、信頼できる人(家族等)へ「託す」という新しい安心のカタチ〜
「家族信託(かぞくしんたく)」という言葉を聞いたことがありますか?
最近、相続や終活、特に「認知症対策」について調べていると、この言葉を目にする機会がとても増えてきました。
「家族信託って、結局何をするの?」
「子どもに財産をプレゼント(贈与)すること?」
「成年後見制度や遺言書とは、何が違うの?」
このように、名前は知っていても具体的なイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか。
家族信託をシンプルに一言で表現するなら、「自分の大切な財産を信頼できる人(家族等)に託し、自分や家族の安心のために管理・運用してもらう仕組み」です。
特に、「将来、認知症などで判断能力が落ちてしまったら、不動産や預金はどうなってしまうんだろう……」という不安を抱えるご家庭にとって、非常に心強い選択肢として注目を集めています。
今回は、
・そもそも「家族信託」とはどんな仕組みなのか?
・家族信託を使うメリットと、知っておくべき注意点
・家族信託・遺言書・後見制度の「決定的な違い」と使い分け
という3つの視点から、街の法律家である行政書士の立場からわかりやすく丁寧に解説していきます。
■ ① 家族信託とは何か?
〜「親が認知症になったら」に備える、実情に即したアイデア〜
たとえば、今年80歳になるお父さんがいるとします。
お父さんはご自宅を所有しており、将来の生活費や介護費用にと、大事な預貯金もお持ちです。
今はとってもお元気で、自分で銀行へ行き、自宅の手入れもこなしています。
しかし、数年後に万が一認知症が進行し、判断能力が低下してしまったらどうでしょう。
ここで必ず直面するのが、「お父さんの財産を、誰がどうやって管理するのか?」という問題です。
「実の子どもである自分が、代わりに銀行でお金を下ろして、介護費用に充てればいいじゃないか」
そう思われるかもしれません。しかし、これまでお伝えしてきた通り、本人の判断能力が落ちると銀行口座は凍結され、たとえ我が子であっても親の口座からお金を動かすことはできなくなります。また、「親の自宅を売却して、そのお金で良い介護施設に入れてあげたい」と思っても、子どもの独断で不動産を売ることは法律上できません。
そこで、お父さんが元気なうちに、
「将来、自分が管理できなくなっても困らないように、今のうちに信頼できる息子に財産管理の『権限』を託しておこう」
と、あらかじめ契約を結んでおく。これが「家族信託」のスタートです。
「財産をあげる(贈与)」わけではありません
家族信託を理解するうえで、行政書士として一番強調しておきたいポイントがあります。
それは、「家族信託は、財産を家族にあげる(プレゼントする)制度ではない」ということです。
たとえば、お父さんが自宅の管理を息子に託したとします。
これは「今日からこの家は息子のものだから、好きに売って遊んでいいよ」という意味ではありません。
あらかじめ契約で決めたルール(例:「お父さんの介護費用を作るためなら、息子が代表して家を売却してもよい」など)に従って、息子が「お父さんのために」財産を管理するという役割を担うだけなのです。
3つの役割「委託者・受託者・サポートされる人」
家族信託の仕組みを整理するために、登場する「3つの役割」を知っておくと理解がとてもスムーズになります。
・委託者(いたくしゃ): 財産を託す人(例:お父さん)
・受託者(じゅたくしゃ): 財産を託され、管理する「サポート役」(例:息子さん)
・受益者(じゅえきしゃ): その財産から生まれる「利益」を受け取る人(例:お父さん)
つまり、「お父さんの財産を息子に託して代わりに管理(受託)してもらい、その財産から出る利益や売り上げたお金は、すべてお父さん本人(受益者)の生活や介護のために使う」という仕組みです。
名義(管理権限)だけを信頼できる家族に移し、その恩恵は本人が受け取り続ける。
これが、家族信託の大きな特徴であり、多くのご家族に選ばれている理由なのです。
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